中国製冷凍ギョーザによる中毒事件のニュースは、それまで「安全はそこにある物」と考えがちな日本人に強烈な印象を残した。事件は未だ捜査中だが、真相は追々明らかになっていくことだろう。既に被害に遭われた方々にはまず、お見舞い申し上げたい。と同時に我々は、官民共に再発防止へ向けた様々な対策を練らなくてはならない。
日経新聞(2月18日)によると、厚生労働省は再発防止策として、以下の項目を決めた。
●食中毒発生時、都道府県が厚生労働省に通報する義務のある原因物質に殺虫剤等の化学物質を追加
●食品輸入業者に向けたマニュアルを作成
●加工食品等の輸入業者による、輸入相手国の製造過程等を管理するためのガイドライン作成
●検疫関係者や有識者による検討会を設置
既に薬事・食品衛生審議会では食品衛生分科会で了承。今後は食品衛生法の施行規制改正に動き出し、段階的に実施・検討されるが、世界屈指の食料輸入大国である日本は、常にそうした様々な脅威に晒されている。年間約3,000万トンの食料を約200カ国から輸入し、およそ60%のカロリーが輸入食品という現状を考えると、是非とも早急な実行を期待したい。
特に今回の再発防止策で目玉となるのが食中毒の原因物質に化学物質が加えられたことであろう。都道府県から厚生労働省に通報する義務がある食中毒原因物質は現在、サルモネラ、ボツリヌス菌等9タイプの細菌に限られている。しかし今回ギョーザから検出されたメタミドホス等の殺虫剤は規定外であった。つまり、化学物質が混入した食品による食中毒が発覚しても、厚生労働省は早急に把握できなかったことになる。化学物質が通報規定外だったとは少々意外だが、今回都道府県からの通報義務と指定された事により、今後、全国的な輸入段階、仕入段階での速やかな商品回収、被害拡大の抑止が可能となる。もちろん行政だけではなく、企業としてもリスクマネジメントのための情報把握が迅速・的確になり、効率的に被害対処することができる。
他には輸入業者向けマニュアルや、輸入相手国における製造過程等の管理ガイドラインも見逃せない。もちろん各企業共、既に相当努力・苦労している部分だろう。相手国により法規制や衛生水準が違い、生産・流通間の情報が不足し、時には突然の事情により相手国に振り回されることもある。そして何よりも日本には無い、もしくは馴染みの薄い食材が使われる事も考慮しなくてはならない。そういった場合の資料として、行政からのガイドラインやマニュアルの提示は良いバックアップになるだろう。
今回のような事件は消費者だけではなく、企業から小売・飲食店まで、時には外交問題と様々なところに被害を及ぼす。メタミドホス混入の原因はいまだ掴めていないが、それでも予防するために何をして何をさせないか、対処方は見えてきた。同様の事件は次回から回避できるよう、法整備に始まる様々な予防策を是非とも実行してもらいたい。(2008.3.17)